1.はじめに
ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事は日本で一番メジャーな英語の検定試験として知られる「英検」についてです。おそらく、この記事を読んでいる皆さんは既に受けたことがあるか、これから受験しようとしているのかなと思います。しかし、「英検」の採点方式や合格の基準については不明瞭な部分が多くあります。
今回の記事では、「英検徹底解剖シリーズ」の第一弾として、英検の合否の判断や、入試などで用いられる「英検CSEスコア」について、大学受験をする高校生にとって必要な説明をしていきます。この記事は英検3級から1級までの各級に対応した内容になりますので、皆さんの受験級に合わせてお読み下さい。
2.英検CSEスコアとは
英検CSEスコアとは、英検の各級の得点を共通の基準を持ったスコアで表記した数値です。この共通の尺度であるCSEスコアが、大学入試等で活用されています。
また、英検CSEスコアは国際標準規格であるCEFRにも対応しており、英語の4技能(スピーキング、ライティング、リスニング、リーディング)のスコアとトータルスコアが算出されます。CEFRについてよく知らないよ!という方は以下のブログ記事をご参照下さい。
英検協会のサイトによると、各級のスコア及びCEFRの対応表は下の図のようになっています(図の出典も前述のリンク先と同じです)。
3級以上の各級についてはスピーキング、ライティング、リスニング、リーディングに均等にCSEスコアが割り振られており、例えば準2級なら満点は2400点なので、4技能それぞれの満点のスコアは600点となっています。そのため、合格のためにはすべての技能をまんべんなく伸ばしていく必要があります。英検準2級の例を続けるならば、もしもリーディングとリスニングが600点満点であっても、ライティングの点数が0点であったならば一次試験で不合格になってしまいます。
また、大学入試等でCSEスコアが必要となる場合は4技能すべての試験を受ける必要があります。ペーパーベースのテストである従来型の「英検」の場合は、一次試験に合格しないと、スピーキングの試験を受けることができません。従来型「英検」の一次試験で不合格となると、英検CSEスコアは残りませんので注意しましょう。合否を問わず、CSEスコアが必要となった場合には必ずCSEスコアの残る「英検S-CBT」を受験するようにしましょう。
この英検CSEスコアが導入されたのは2016年とわりあい新しく、それ以前の英検の合格基準について書かれたまま放置されているサイトも多い(学校によってはこうした英検の重大な変更すら知らない先生もいる)ため、注意しましょう。繰り返しになりますが、現在の基準では、英語の4技能は全てCSEスコアにおいて均等に割り振られており、特定の技能のスコアが極端に低い場合は合格することができません。
3.英検CSEスコアと合否判断
次に、英検の合否の判断はこのCSEスコアによって行われているということを理解しましょう。英検各級の合格基準スコアは以下の表の通りになっています。なお、従来型「英検」でも「英検S-CBT」であってもこの合格点は変わりません。
級 | 一次試験合格基準/満点 | 二次試験合格基準/満点 |
1級 | 2028 / 2550 | 602 / 850 |
準1級 | 1792 / 2250 | 512 / 750 |
2級 | 1520 / 1950 | 460 / 650 |
準2級 | 1322 / 1800 | 406 / 600 |
3級 | 1103 / 1650 | 353 / 550 |
この表を見て、読者の皆さんは「英検準1級の一次試験に合格するには2250点中の1792点、つまりは8割正解すればいいんだ!」と計算したかもしれません。実は、ここに大きな落とし穴があります。もし仮に、一次試験の全ての問題で8割の問題に正解したとしても、必ず合格できるとは言い切れません。
それはなぜかというと、CSEスコアは、実際のテストで取得した点数(素点と呼びます)から算出され、その計算式は各回で毎回異なるためです。CSEスコアは当然素点によって大きく変わりますが、問題全体の難易度や受験生全体のレベルによっても変動するため、同じ素点であっても全く同じCSEスコアにはなりません。例えば、英検準1級のライティングにおいて13点を取得した場合、2019年第1回では604点に換算されましたが、第2回では615点に換算されました。基本的にリーディングでは素点とCSEスコアの差は受験回によってそれほど変わることはありませんが、リスニングやライティングについては受験回によって同じ素点でもCSEスコアがかなり変化する場合があります。
ちなみに、過去数年分のデータによれば、英検準1級において全ての問題で80%の問題に正解した場合、先ほどの予想とは逆に、大きく合格点を越えてしまうので、実際に必要な得点率は75%程度です。
英検の各級における、過去のデータに基づいて計算を行った具体的な合格に必要な素点については、各級の攻略記事において説明していますので、是非確認してみてください。
4.知っておきたい「2級A」合格
大学受験に英検を利用したいと考えている皆さんにとって知っておきたい知識として、英検2級には上の図にあった、通常の合格に加えて、もう一つ「2級A」合格という言葉が存在していることです。
この「2級A」合格のためには、英検CSEスコア2150点以上で英検2級に合格する必要があります。大学によっては2級合格ではなく、「2級A」合格を出願や得点換算の条件にしている場合があります。もしも皆さんの受験したい学校の要項に「2級A」という言葉が書いてあった場合は、CSEスコアが重要になるということを必ず意識して受験をしましょう!
5.英検CSEスコアと大学入試
ここまでの内容で、英検CSEスコアについての理解は深まってきたでしょうか。本項では、この英検CSEスコアが大学入試ではどのように用いられているのかを、2021年度の一般入試における英検CSEスコアの活用事例をいくつか挙げて説明していきます。
多くのケースでは英検2級合格ラインの1980点か、それに若干満たない1950点、「2級A」合格の2150点、準1級合格の2304点に一定の基準を設けられています。例えば、東洋大学では2304点で英語の個別試験を満点に、2150点で9割に、1980点で8割に換算する制度を導入しています。
しかし、大学独自の基準によって英検CSEスコアを基準とした入試活用を行っている大学もあります。例えば明治大学は2150点の「2級A」ではなく、2088点という独自の基準でみなし得点のラインを設定しているほか、成蹊大学のG方式(2教科型グローバル教育プログラム統一)では以下の基準での得点加算が行われています。
CSEスコア | 加点点数 |
2304(準1級合格ライン) | 50 |
2125(2級合格だがA合格ではない) | 45 |
1980(2級合格ライン) | 30 |
1825(準2級合格だが2級は不合格) | 15 |
その他にも武蔵野大学や京都外国語大学などは非常に細かい得点換算の基準を設定しており、ただの合格不合格だけではなく、CSEスコアを重視していることが分かります。
さらに英語外部試験の導入を進めているのは立教大学であり、2021年度入試からは英語の個別試験を廃止しています。
その代わりに、英語外部試験のスコアに統計的処理を行い、1点単位で点数化して、その得点を合否判定に利用しています。2024年度の立教大学の入試では、CSEスコア2400点で95%相当の得点に、2300点で85%相当の得点に換算されます。なお、2020年度はCSEスコア2238点で95%相当の得点に、2113点で85%相当の得点、2021年度は2265点で95%相当の得点、2195点で85%相当の得点に換算されたというデータが公表されていたため、過去数年で水準はかなり高まっていると言えるでしょう。
立教大学の一般受験を検討している皆さんは是非、CSEスコアの1点にまでこだわって英検の受験をしてもらえればと思います。
最後に、とても大切な注意事項を伝えたいと思います。実は、英検CSEスコアは試験自体に不合格であっても4技能の得点が揃っていれば、多くのケースで使用することが出来ます。以下の例がよくあるパターンになります。
例:2023年度青山学院大学文化政策学部 一般選抜 A方式
英検CSEスコア2100点が出願資格として必要
英検2級 4技能合計のCSEスコア1980点で合格 → 出願不可
英検2級 4技能合計のCSEスコア2150点で合格 → 出願可
英検準1級 4技能合計のCSEスコア2100点で不合格 → 出願可
逆に、4技能のスコアが揃っていないとスコアを使用することができません。従来型の英検では、二次試験まで行けなければ4技能のスコアが揃わないため、一次試験で不合格になった分は大学受験で使用することはできませんでした。
一方、2020年度から始まった「英検S-CBT」は一度に4技能の試験を行うため、不合格であっても必ずCSEスコアが残り、受験に活用することができます。そのため、英検S-CBTのほうが大学受験で使用する場合にはオススメの方式になります。詳細は以下の記事で紹介しているので、ぜひ見てみてください!
6.おわりに
この記事を通して、英検CSEスコアの仕組みと重要性を理解してもらえたでしょうか。少しでも皆さんに書いた内容が伝われば嬉しいです。
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