1.はじめに
ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事も多くの方が受験するであろう検定試験である、「英検」についてになります。特に、今回は「英検徹底解剖シリーズ」の第二弾として、ライティングセクションの出題形式・採点基準・対策について書いていきたいと思います。2024年度からの英検の問題形式リニューアルに対応するため、今回かなり加筆を行いましたので、安心して読んでもらえればと思います。
別の記事では、英検CSEスコアについての紹介と英検リーディング・スピーキングセクションの解説を行っているので、こちらも合わせてご覧になって下さい。
今回も特定の級に特化した対策ではなく、3級から1級までの全ての級で通用する、基本的な考え方を説明していきます。是非最後までお読み下さい。具体的な各級の対策は以下のリンクからどうぞ。
2.英検ライティングの出題形式
まず、英検ライティングの出題形式ですが、現在ではすべての級において2問の問題が出題されており、級により出題形式が異なっています。以下の表にまとめてみましたので、確認してください。
意見論述問題 | Eメール問題 | 要約問題 | |
1級 | ◯ | ◯ | |
準1級 | ◯ | ◯ | |
2級 | ◯ | ◯ | |
準2級 | ◯ | ◯ | |
3級 | ◯ | ◯ |
以前はすべての級で意見論述問題が1題出題されているのみでしたが、2024年度からは意見論述問題に加えて、要約問題・Eメール問題が各級で出題されるようになっています。以下ではそれぞれの問題形式について解説をしていきます。
1.意見論述問題
意見論述問題は、近年の英検では全ての級において定番となったタイプの問題で、QUESTIONまたはTOPICが与えられ、それに対して自分の意見とその理由を答えていくという形式となっています。そのため、まずは与えられたQUESTION・TOPICに対する自分の意見をハッキリとさせ、その後で理由を書く必要があります。
例えば英検3級のライティングでは「Which season do you like the best?」というQUESTIONが与えられますので、まずは「I like summer.」のように自分の意見を述べる必要があるということです。具体的な答えの書き方についてはこの後で見ていきますが、どの級においてもこのような形で意見を述べなくてはいけないということを理解しておきましょう。
では、各級ごとの違いはどこにあるかというと、1つ目は「与えられる問題が複雑になる」こと、2つ目は「要求される語数が増える」ことになります。
例えば英検準1級になると「Do companies need to improve the way they treat their workers?(会社は社員の待遇を改善する必要があるだろうか)」という問題に対して答える必要があります。上の英検3級の例に比べて、話題が身近ではなく、抽象的な問題が与えられていることが分かるでしょうか。さらに、英検3級のライティングは25~35語で解答する問題ですが、準1級になると120~150語で答えなくてはなりません。そのため、上位の級では長い文章を書くための、論理的に文章を構成する能力が求められます。
2.Eメール問題
Eメール問題は準2級と3級のみで出題される形式で、メールを読んでそれに対しての返事のメールを書くという問題になっています。与えられたメールを読み、適切な応答を書く必要があるので、リーディング能力(何を書いたら良いのかを把握する能力)も必要な形式です。
英検3級のEメール問題は、与えられた質問に答えるだけの単純な問題形式で、疑問文に対する応答を書く能力が求められます。これに対し、準2級ではメールの質問に答える必要もありますが、それだけでなくメールの内容から「より理解を深めるため」の質問を2つする必要があります。この質問をするには、ライティングの技術だけではなく、思考力も求められるため、3級の問題よりは格段に難しくなっていると言えるでしょう。
3.要約問題
要約問題は2級以上のライティングで出題される形式で、与えられた文章の要約文を書くという問題です。与えられる文章は3つのパラグラフからなる英文で、これを3~4文にまとめていくことが求められています。
問題を解くためにはパラグラフごとの要点や展開を理解し、短い文章にまとめる技術が必要です。そのため、Eメール問題と同様に、リーディングの能力も求められる形式といって良いでしょう。
級による違いは主に英文の長さと難しさで、要約するべき文章が長く、難しくなればなるほど、まとめる作業は難しくなります。2級では約150語の英文ですが、1級ではその倍の約300語の文章を要約する必要があります。
また、意見論述問題と同様に、上位級の英文は国際的な話題など、日常生活では馴染みがほとんどないテーマの文章が素材となります。そのため、難しい英文を読み取って、その要点だけを取り出し、抽象的な言葉でまとめていくという能力が必要になってきます。
3.英検ライティングの採点基準と対策
以上のような出題形式を踏まえて、どのような解答を作れば良いのかということを説明したいのですが、英検ライティングの採点基準について説明をしていきながら、求められる答案のスタイルを説明していきます。それはなぜかと言うと、採点基準を理解することで、高得点が狙いやすい答案がどのようなものであるのかを知ることができるからです。
英検ライティングは意見論述問題と要約問題について「内容」「構成」「語彙」「文法」の4つの分野を、それぞれ1点から4点の間で評価しており、満点は16点となります。Eメール問題は「構成」を除いた3つの分野を準2級では1~4点、3級では1~3点で評価しています。もちろん、全ての級で採点の細かな基準は異なりますが、まずはこの4つの基準でライティングが評価されていることをしっかりと理解しましょう。
これから、主に意見論述問題を対象にして英検ライティングの4つの採点基準について説明をしていきますが、実は英検協会のホームページに採点基準についての記載があります。1級~2級、準2級、3級と分かれているので、3つのリンクを張っておきますが、内容はだいたい同じなので、この記事ではまとめて説明をしていきます。
1.「内容」の採点基準
まず「内容」についてですが、上のリンクにも書いてある通り「課題で求められている内容(意見とそれに沿った理由)が含まれているかどうか」が採点基準となります。英検協会のウェブサイトには以下のようなアドバイスが書かれています。
自分の意見と合わせて、その理由を明確にしましょう。その際に、多様な観点から考えて、意見を支える論拠や説明がより説得力のあるものになるようにしましょう。例えば、理由を書く際に、単純に「安いから」や「便利だから」だけでなく、安くなることがどういうことにつながるのか、また便利になることの具体的な例なども書きましょう。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2016scoring_w_info.html
出題形式の部分でも説明した通り、まずは意見を書き、その後で理由を書く必要があるのですが、説得力のあるライティングを行うことが重要になります。これは英語の能力も重要ではありますが、どちらかというと日頃から論理的な思考をしているかどうかが試される部分になります。
先ほど紹介した英検準1級の問題について、説得力のある理由を皆さんは書くことができるでしょうか?是非考えてみてください。
私は時折、生徒に英検準1級のライティング課題を出すのですが、実際多くの生徒は日本語であっても問題に対して説得力のある答えを作ることができません。その理由は単純で、日頃から社会性の高い、抽象的なテーマについて考える機会を持っていないからです。そのため、2級以上の高い級で高得点を取るためには、日頃から多くの文章を読んだり、思考力を高めたりする努力が不可欠です。
2.「構成」の採点基準
次の「構成」については「英文の構成や流れがわかりやすく論理的であるか」と英検協会のサイト上では説明されていますが、具体的にはアカデミック・ライティングと呼ばれる英文のライティングスタイルに合わせて文章が書くことができているかがポイントになります。ちなみに、英検協会のウェブサイトでは以下のように説明されています。
伝えたい情報の流れや展開を示す表現(接続詞など)を効果的に使って、自分の意見とその理由や英文全体の構成をより分かりやすくするようにしましょう。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2016scoring_w_info.html
この説明だけでは分かりにくいので、分かりやすく説明すると、Introduction(自分の主張)→Main Body(その理由)(→Conclusion(結論・2級以上のみ))という流れを取れているか、それぞれの部分において流れや展開を表す語句(But, However, So, Then, Therefore, In addition, For exampleなど)を用いることができているかが採点基準になります。
この「構成」の部分は難解な「内容」や採点基準が分かりにくい「語彙」「文法」とは異なり、簡単に高得点を狙うことができるので、確実に高得点を狙いたい部分になります。
3.「語彙」の採点基準
次の「語彙」の採点基準については「課題に相応しい語彙を正しく使えているか」と書かれており、基準が非常に分かりにくい部分になります。まずは英検協会のウェブサイトによる具体的なアドバイスを見てみましょう。
同じ語彙や表現の繰り返しにならないように、文脈に合わせて多様な語彙や表現を適切に使用して、自分の意見とその理由を十分伝えられるようにしましょう。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2016scoring_w_info.html
正しい綴りや意味で使われているかを意識しながら、自分の意見とその理由を十分伝えられるようにしましょう。なお、英語以外の言葉を使う場合は、その言語を知らない人でも理解できるように、説明を添えましょう。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2017scoring_p2w_info.html
ここについては2級以上と準2級以下で基準が異なっており、2級以上は語彙の多様さや表現の適切さがポイントになる(=文脈に応じて適切な語句を選択する)一方で、準2級以下ではスペルの正しさや意味の正確さが重要になっています。
また、使える語彙の増える2級以上では、同じ意味の言葉を複数知っている場合に1度目と2度目は違う単語を使う(例えば「扱う」という単語をdeal with、treatといったように言い換えをしていく)など、表現の繰り返しを避けることも重要になります。
4.「文法」の採点基準
「文法」の採点基準は3級では「文法的に正しい英文が書けているかどうか」、準2級以上では「文構造のバリエーションやそれらを正しく使えているか」となります。3級ではとにかく文法的に正しければよいのですが、それ以上の級ではより難しい要求がされています。英検協会のウェブサイトでは以下のような説明があります。
同じような形の文の繰り返しにならないように、多様な文のパターンを適切に使用して、自分の意見とその理由をより効果的に伝えられるようにしましょう。また、文単位で書くことを意識し、So much fun.やBecause it is fun.のように不完全な文を書かないように気を付けましょう。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/2017scoring_p2w_info.html
同じような形の文の繰り返しを避け、多様な文のパターンを適切に使用するというのが少し分かりにくいので、以下で具体例を使って説明していきます。
では英検準2級のライティング問題「Do you think it is good for children to watch TV?」に対する以下の2つの答えを見てみましょう。
【悪い例】 I think it is good for children to watch TV for two reasons. First, I think children can study a lot of things from TV. Children can learn a lot of subjects on TV.
【良い例】 I think it is good for children to watch TV for two reasons. First, children can learn a lot of things by watching TV. For example, there are variety of subjects like English, science and so on.
悪い例はアンダーラインを引いた部分や太字・斜体にした部分で似通った表現が用いられています。その一方で、良い例では似通った表現が用いられた部分を変更し、同じ表現の繰り返しを最低限に抑え、より具体的で分かりやすい内容を書きました。見比べるとどちらが文法的に美しいかは一目瞭然かと思います。
以上の4つの採点基準を意識して答案を書くことで、より高得点を狙うことができるようになっていきます。詳細な級別の答案の作り方については別の記事を設けて紹介していく予定です。
4.おわりに
この記事を通して、英検ライティングの出題形式・採点基準・攻略法を理解してもらえたでしょうか。少しでも皆さんに書いた内容が伝われば嬉しいです。
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