CEFR A1&A2レベルの詳細解説【英語教育者も知らない】

CEFR A1&A2レベルの詳細解説 英語教育者・研究者向け
スポンサーリンク

1.はじめに

 ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。以前の記事でCEFRを意識した学習の必要性について説明をしたのですが、今回からは6段階あるCEFRレベルについての詳細な解説をしていきます。まずこの記事ではA1とA2の2つのレベルを紹介します。ちなみに、CEFRを意識した学習についてはこちらをご覧ください。

 実は、CEFRのレベル自体についてはブリティッシュ・カウンシルというイギリス政府が運営している英語教育の団体が分かりやすく説明している(そして多くのブログではそれのコピペで説明を済ませている)のですが、この記事ではCEFRを作成している欧州評議会によるレポート(2020年の最新版は280ページあります……)などを参照し、それよりも詳しく解説をしていこうと思います。

スポンサーリンク

2.CEFRとは

  CEFRはCommon European Framework of Reference for Languagesの頭文字を取った表現で、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳されます。これはヨーロッパ各国の言語について、言語の壁を超えてその能力を参照するための基準として、制定されたものです。CEFRのレベルは、言語の習熟度に応じて下からA1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階に分かれており、レベルごとに「~することができる」という形式で書かれています。例えば、A1レベルのスピーキング・プロダクションでは「住んでいる場所や知っている人を説明する簡単な語句や文を使うことができる」と説明されています。

 本来、この基準は英語を始めとするヨーロッパ各国の言語を対象として作成されたものですが、現在では日本語をはじめとする世界各地の言語にも適用されています。例えば中国語の国際的な検定試験であるHSK(漢語水平考試)は1級から6級までに分かれているのですが、この6つの級はCEFRのA1からC2までにそれぞれ対応した内容となっており、このCEFRという概念が世界中の言語に広がっていることが理解できると思います。

 また、このCEFRが制定されたのは2001年ですが、アップデートが定期的に行われており、最新の2020年版では80以上の細かい項目(例えば、会話においても「友人との気楽な会話」と「会議における会話」は別々に定義されています)について「~ができる」という形で6つの全てのレベルが定義されています。項目によっては、上で書いた6段階だけではなく、A1レベルより下の「Pre-A1」レベルや、B1とB2の間に「B1+」、B2とC1の間に「B2+」というレベルが設定されている場合もあります。英語教育者や研究者の方はご存知かなと思いますが、詳しく知りたい方は是非レポート本体をご覧になってみて下さい。

 さて、この記事では英語にフォーカスしていくため、英語の検定試験とCEFRがどのように対応しているのかを示した表を紹介します。この記事を読んでいる皆さんが現在どのレベルにいるのかを確認してみましょう。

英語外部試験とCEFRの対応表
英語検定試験とCEFRレベルの対応表(出典:文部科学省)

 以下の部分では各CEFRレベルがどの程度の能力にあたるのかを具体的に紹介していきますが、読者の皆様へのわかりやすさを優先するため、本来のレポートで扱われている80以上の細かな項目を、馴染みのある英語4技能(リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング)に置き換えています。

スポンサーリンク

3.CEFR A1の世界

 まずは最低レベルのCEFR A1について紹介していきます。ブリティッシュ・カウンシルによる解説は以下の通りです。

具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。

https://www.britishcouncil.jp/programmes/english-education/updates/4skills/about/cefr

 上の表を見てもらってもわかるとは思いますが、CEFR A1は既に英検で言えば3級レベルであり、よく使われる表現を中心とした英語の使用が可能となります。そのため、それ以下のレベルは先ほど説明した「Pre-A1」と表現されます。まだ英検4級以下しか持っていない初学者の皆さんは、CEFRではA1レベルに到達していないということですね。

 それでは、欧州評議会によるレポートを参照しつつ、より具体的にA1レベルがどの程度かを説明していきます。まず、リーディングについては、注意書き・ポスター・カタログのような分かりやすい語句や簡単な文が分かる程度になります。下の画像のような注意書きは駅のホームでよく見るものなのですが、意味は分かるでしょうか?(あるいは、想像がつくでしょうか?)

CEFR A1レベルに必要なサポート用画像
MIND THE GAPの注意書き

 この注意書きの意味は「電車とホームのすき間に注意」ですね。A1レベルだとこの写真のように、言語以外の手助けが必要なことも多くあります。

 その他の技能についても能力を見ていきましょう。リスニングでは、非常にゆっくりなもののみが理解可能で、内容も自分自身や家族、学校、趣味など身の回りの事柄のみに限定されます。短い文章から必要な情報を理解することもできますが、やはり読む速度は遅く、内容は身近なものになります。スピーキングにおいては自分自身や場所など、単純な語句を使うことができる程度と定義されます。質問に答えることも可能ですが、ゆっくりと言い間違いながらの表現になったり、同じ言葉の単純な繰り返すような表現になります。場合によっては言葉だけではなく、ジェスチャーを用いる必要もあります。そして、ライティングではクリスマスカードなどを書いたり、ホテルの予約フォームを埋めることができるなど、非常に簡単な言語活動が可能です。

 ここまで見てきた通り、CEFR A1レベルでは非常に限定的な場面においてのみ英語を利用することが可能というのが特徴になります。

スポンサーリンク

4.CEFR A2の世界

 続いて、1つランクを上げてCEFR A2の世界を見ていきましょう。英検で例えれば準2級合格レベルであり、文部科学省は全ての高校3年生をこのレベルに到達させることを目標としています。まずはブリティッシュ・カウンシルによる大まかな説明を見てみましょう。

ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純で直接的な情報交換に応じることができる。

https://www.britishcouncil.jp/programmes/english-education/updates/4skills/about/cefr

 正直、この説明を見ただけではA1レベルと何が違うのか分かりにくいですね。ここも欧州評議会のレポートを読みつつ、さらに具体的にA2レベルの世界を紹介していきます。

 まず、リーディングについては非常によく使われる語彙が使われた短い文章が読めるようになります。先ほどのような画像の手助けがなくとも、手紙やウェブサイト、ガイドブック、広告、告知など多様な文章を理解できるというのがA1レベルとの大きな違いになります。

 リスニングについても、ハッキリとゆっくり話してもらわないと理解はできませんが、身の回りのことだけでなく、買い物や仕事に関すること、スポーツや料理の指示など、重要なことについては話題についていけるようになります。また、スライドやレジュメがあればプレゼンテーションにもある程度ついているレベルがこのCEFR A2となります。

 スピーキングでは他の人の手助けがあれば自分自身や身の回りのことを話したりすることができるほか、毎日の習慣については苦労せずに英語を用いれるようになります。また、よくあるシチュエーションでは会話や議論に参加したり質問をしたりすることができるようになります。さらに、他者と協力しての作業や、簡単なプレゼンテーションが可能になります。

 ライティングではand, butやbecauseといったシンプルなつなぎ言葉を使いながらメールや手紙の文章を書くことが可能になります。内容は個人的なことについてですが、慣れたレパートリーを使って文章を書くことができるようになります。オンライン上でも英語を用いてやり取りを行ったり、協力しての作業をすることが可能になります。

 このようにA2レベルとなると、慣れ親しんだ分野には限定されますが、ようやく英語を様々な場面で使えるようになってきます。このレベルに到達することが言語を習いたての皆さんに取っては最初の大きな目標となりますが、英検準2級レベルという言葉が示す通り、そこまで到達するまでにかなりの時間がかかることも事実です。しかし、このレベルに到達することができれば、B1・B2レベルに到達するまではそれほどの労力は必要ないでしょう。

スポンサーリンク

5.おわりに

 この記事を通して、CEFR A1とA2のレベルがどれくらいのものなのかを理解することができれば幸いです。CEFR B1以上の解説記事も書いておりますので、合わせてお読みになって頂ければ幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました