英検準1級・1級の難易度についての徹底分析【すごさを解説】

英検準1級・1級の難易度についての徹底分析 英検対策
スポンサーリンク

1.はじめに

 ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事は英検準1級・1級の試験の難易度について考えたいと思います。英検2級と準1級以上を両方受験したことのある方には分かって頂けるかと思いますが、英検準1級・1級は難易度が非常に高い資格試験であり、2級までとは比較にならない難易度であると言えます。また、周りに英検準1級以上を所持している方のことがいれば想像してください。おそらくその方は「英語ができる」という社会一般で思われているのではないでしょうか。

 特に、英検1級は難しい資格試験として広く知られており、「ネイティブであっても落ちる」とまことしやかに言われています。そのため、英検1級の合格者は一種の「ステイタス」を持つことが出来るといえるでしょう。これは私の例ですが、生徒たちに英検の取得を勧めたり、英検対策の指導を行っていると「先生は英検何級を持っているんですか?」という質問を受けることがあります。あるいは、保護者面談中に保護者の方から尋ねられたこともあります。そこで事実に基づき「1級です」と答えるわけですが、生徒も保護者の方も「ええっ」と驚いた反応をされ、それ以降は敬意を払われることがほとんどです。実際、大学で英文学や英語学を専攻して教壇に立っている高校教諭であっても、英検1級レベルの英語力を持っていないケースは少なくない、むしろ多いでしょう。

 つい前置きが長くなってしまいましたが、今回は英検準1級・1級の試験を様々な角度から研究することで、その難易度の源泉はどこにあるのか、実際のところどれくらいすごい試験なのかを紹介していきます。この記事では国際的な言語指標である「CEFRレベル」、純粋な単語力である「語彙レベル」、各技能の試験で問われる「テーマ・題材」という3つの観点から英検準1級・1級の試験を評価していきます。

スポンサーリンク

2.CEFRレベルから見た英検準1級・1級

 まずはCEFRレベル」という観点から英検準1級・1級を評価していきます。そもそもCEFRとはなんぞやという方は以下の記事をお読みください。

 上の記事でも既に触れていますが、英検準1級・1級はCEFRのB2C1に対応したレベルになっています(下図参照)。他の検定試験と比べると、CEFR B2レベルはGTECやTEAPでは相当のハイスコアですし、IELTSでは5.5-6.5TOEFL iBTでは72-94海外大学の学部にストレートインも可能な英語力であることがわかります。

検定試験とCEFRレベルの対応表
検定試験とCEFRの対応表

 さらに、英検1級の合格レベルとなっているCEFR C1IELTS 7.0-8.0TOEFL iBT 95-120に対応しており、これは海外の大学院の入学条件を満たすスコアになっています。より具体的にこれらのCEFRレベルがどういった英語力を指しているのかについての解説を読みたい場合は以下の記事をぜひお読みください。

 また、英検を含めたほとんどの検定試験がCEFR C1レベルまでしか測定が出来ないという点にも注目してみましょう。これは、CEFR C2レベルがC1レベルと似ているため、評価が非常に困難であるということにも起因しますが、CEFR C2レベルの英語学習者が非常に少ないため、検定試験で評価をする必要性に乏しいということも意味しています。

 さらに英検準1級以上のCEFRレベルがどれほどの能力であるのかを紹介していきましょう。文部科学省は中学校・高等学校の英語教諭に対して、英検準1級相当のCEFR B2レベルの英語力を要求していますが、令和元年度の調査では中学校教諭のわずか38.1%、高校教諭の72.0%しかその水準を満たしていないことが明らかになっています(参考リンク)。英検準1級に合格すれば中学校で英語を教えている先生の半数以上よりも高い英語のスキルを持っていることを証明することができるわけですね。

 このように、英検準1級・1級は取得の難しい試験であることが、CEFRレベルを用いた評価からお分かりいただけたのではないかなと思います。

スポンサーリンク

3.語彙レベルから見た英検準1級・1級

 次に、語彙レベルから英検準1級・1級がどれほど難しい試験であるのかを評価していきます。英検合格のために非常に重要なポイントは語彙問題の攻略であることは以前の記事で説明をしました。

 リーディングセクションのうち、約5割を占めるこの語彙問題ですが、非常にレベルが高いことで有名です。以下に英検準1級・1級の語彙問題で問われた単語を紹介することで、その語彙レベルを検証します。

 ただ、一般の英語学習者にとっては聞いたこともないような語彙が大量に出てくるので、アルクが設定している英単語リスト「標準語彙水準SVL12000」の12段階のレベルを使って紹介をしていきます。このリストは、日本人英語学習者にとって必要とされる語彙を1000語×12段階に分類したものになっており、レベルが上に行けば行くほど難しい単語であることを意味します。リストについての詳細は以下のリンクからどうぞ。

 また、このSVL12000語水準を超える語については、Weblioの単語レベルを参考として掲載しています。こちらは30段階で、レベル13以上の語はすべて英検1級レベルを超えています

1.英検準1級の語彙レベル

 では、英検準1級の問題から見ていきましょう。今回は2020年度第3回の一次試験の語彙問題から10問をピックアップし、選択肢となった語をレベル別に分類しました。赤字の単語が正解になった語です。

レベル3 identify

レベル4 surrounding、canal

レベル5 consensus、crucial、overhead、fierce

レベル6 ingredient、attribute、ratio、decent、salute、classify、diminish、insert、tackle、generate

レベル7 gracious、quaint、condifential

レベル8 intolerable、dignify、extinguish、conspire、inventive、trigger

レベル9 preview、simulation、haze、oversight、eventful

レベル10 upheaval、feasible

レベル11 perimeter、inhale

掲載なし(カッコ内はWeblioの単語レベル)

inhospitable(15)、statistic(11)、frailty(13)、personify(15)、underdog(14)

 選択肢・解答ともに、半数の語は7000語レベル以下の単語から選ばれていますが、残りの半数はそのレベル超える語が選ばれています。時には12000語の水準を大きく超える語も正答となる可能性があり、高得点の取得は非常に難しい試験であることがわかります。

 なお、英検協会は過去に発表した審査基準で英検準1級の単語レベルは7500語程度と説明しています(参考リンク)。一般に、大学入学共通テストやセンター試験の語彙レベルが4000語から5000語難関大学入試の語彙レベルが6000語と言われることと比較すると、この英検準1級の7500語という語彙レベルは非常に高いハードルであることがわかります。

2.英検1級の語彙レベル

 続いて英検1級の語彙レベルがどの程度であるのかを見ていきましょう。なお、過去の審査基準で説明されている英検1級の語彙レベルは10000語から15000語と幅をもたせた説明になっています。

 準1級と同様に、2020年度第3回の一次試験から語彙問題の選択肢となった単語を抜粋して、具体的にどれくらいのレベルの単語を身につければ良いのかを見ていきましょう。

レベル6 shattered

レベル7 preface

レベル8 congregation

レベル9 perpetuate、partition、solicit

レベル10 overrideardent、elusive、ornate、inhibition、extraction、arduous、colossal

レベル11 compilation、rendition、contingent

レベル12 demarcation、instigate、corrode、permeate、abate、filial、plenary、decrepit、auxiliary、squalid、inadvertent、deviate

掲載なし(カッコ内はWeblioの単語レベル)

satiate(25)、apathetic(14)、depreciation(15)、appall(24)、concussion(14)、conciliation(13)、conurbation(Weblioもレベル掲載なし)、contraption(17)、barbarous(12)、denigrate(17)、incubate(13)

 見事なまでに1万語水準を超える単語ばかりが選択肢・解答として出題されています。自分も英検1級に合格していますが、この水準の単語はほとんどわかっていません……。恥ずかしいばかりです。

 また、12000語水準を超える単語も正答となることはあまり多くありませんが、3割弱出題されており、選択肢を含めたすべての単語を理解することは非常に難しいと言えるでしょう。

 なお、このレベルの単語はTIMEやThe Economist、Financial Timesといった「高級紙」と一般に呼ばれる新聞・雑誌で見かけるレベルの語であり、日常生活ではほとんど見かけない語ばかりです。対策をせずに英検1級の語彙問題を突破することができる学習者は、こうした英字新聞・雑誌を読む習慣がある英語学習者に限られるのではないかと思われます。まあ、英字新聞がスラスラ読めるようなら、わざわざ英検1級を取ろうとはなかなか思わないでしょうが……。

スポンサーリンク

4.テーマ・題材から見た英検準1級・1級

 3番目の英検の難しさを象徴するポイントとして、試験中に扱われる「テーマ・題材」の難しさについて論じていきます。はじめに述べた「ネイティブでも英検1級は落ちることがある」という理由はまさにこの「テーマ・題材」の難しさにあります

 その代表的な例はライティングセクションの設問です。以下に過去3回分の英検2級・準1級・1級の設問を日本語でお見せしますので、難しさの違いはどこにあるのか考えてみてください。

2級

・もっと多くのアパートでペットを飼うことを許すべきだと言う人がいます。この意見に賛成しますか?(2020年度第3回)

・若者は将来のキャリアについてもっと考える時間をとるべきだという人がいます。この意見に賛成しますか?(2020年度第2回)

・世界中の人々は以前より長い人生を送るようになりました。将来、人々は更に長い人生を送るようになると思いますか?(2020年度第1回)

準1級

・以下のテーマについての賛否を示せ。将来より多くの人がベジタリアンになるだろう。(2020年度第3回)

・以下のテーマについての賛否を示せ。より多くの要求が公衆安全を改善することになるだろう。(2020年度第2回)

・地方自治体がアミューズメント施設や美術館などの観光スポットを建設することは良いことだと考えるか?(2020年度第1回)

1級

以下のテーマについての賛否を示せ。

・グローバリゼーションは今日の世界を前進させる力である。(2020年度第3回)

・世界人口の爆発的増加は人類の将来にとっての深刻な脅威である。(2020年度第2回)

・他のアジア国家との関係性を改善することは日本政府にとっての優先事項である。(2020年度第1回)

 2級の問題は受験者にとって身近なテーマから選ばれることが多く、想像力とヒントであるPOINTSを利用して解答を容易に組み立てることが可能な問題になっています。唯一の抽象的な質問である「将来の人がより長い人生を送るようになるか」というものについても、現在は過去より長いというヒントに加えて、科学技術の進歩という非常に考えやすい理由付けが可能であり、あまり難しい議論ではありません。

 一方の準1級・1級では問題が抽象的であり、「将来より多くの人がベジタリアンになるだろう」のように将来についての質問でも、想像が難しいテーマが出題される傾向にあります。また、2級で見られた身近な話題はなく、準1級・1級では企業や自治体、政府が主語におかれることがほとんどです。

 特に1級では、国家の問題だけではなく、国際関係や世界的な問題がテーマとして取り上げられることがほとんどであり、グローバルな視座が解答にあたっては求められます。2020年度第3回で出題されたグローバリゼーション論については、「新型コロナウイルス感染症の拡大がグローバリゼーションを終わらせるのではないか?」という議論が2020年を通じて英語紙で行われたことに関係する出題でしょう。幾つか参考になる記事のリンクを掲載しておきます。

 このように、ライティングセクションの問題一つをとっても英検準1級・1級は現代社会についての洞察力や深い見識が問われる問題になっています。特に英検1級のライティングで高得点を取るためには時事的な問題についてもしっかりと知識として理解し、英語でアウトプットするだけの能力を身に着ける必要があるでしょう。

 この傾向は二次試験のスピーキングセクションでも同様であり、私が英検1級に合格したときのスピーチのテーマは「あらゆる科学技術は社会の進歩につながるのか」という非常に抽象的な問題であったことを記憶しています。英検1級に合格するためには、多くの英語学習者が母語であっても2分間話せないような内容を、英語でスピーチしなくてはなりません。こうした「社会的難しさ」が英検準1級と1級の難しさの一端を担っていると言えるでしょう

スポンサーリンク

5.おわりに

 ここまで、英検準1級・1級の難しさをCEFRレベル語彙レベルテーマ・題材の難しさという3つの観点から評価していきました。たしかに英検は日本国内でしか通用しないという意味ではTOEFL/IELTSなどに劣る部分がありますが、試験の難易度という観点では非常に難しい試験であることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

 英検準1級・1級をめざす皆さんは英語力の強化だけでなく、社会問題についての見識を高めるための訓練を日々行うことが非常に重要です。ぜひ今回の分析の内容を理解し、今後の英語学習に役立ててください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました