1.はじめに
ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事では、英検・TOEFL・IELTSといった英語外部試験をCEFRレベルや問題形式の面から、それぞれの試験の特徴を掴んで行くほか、問題の難易度を比較していきます!
例えばですが、英語学習者の中には「同じCEFR B1レベルでも英検2級とTOEFL42点はどっちが難しいの?」という質問が多くみられますし、大学や大学院留学を目指す人たちの間では「TOEFLの方がIELTSよりも難しい」と一般的に言われています。今回の記事を通じて、私なりにこうした疑問に答えていこうと思います。
こうした疑問に答えるために、まずは検定試験にそれぞれ存在している受験生の「対象レベル」を紹介していきます。例えば英検は「級」という形で対象レベルがハッキリと分かれていますが、それ以外の検定試験にも対象となるレベルが存在しており、今回はこの「対象レベル」に着目をして問題のレベルを考えていきます。
そして、それぞれの検定試験は英語の4技能(リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング)の能力を測るものであるため、各技能の試験がどのように行われるのかを詳しく紹介していくことで、各検定試験の特徴や、難易度を理解していきます。
2.各検定試験の対象レベル
まずは各検定試験の対象レベルについて説明をしていくわけですが、そもそも級のような制度の存在しないTOEFL・IELTS・TOEICには対象レベルなんてものが存在するのかという質問があるかもしれません。これについてはハッキリお答えしますが、いわゆる「英語の検定試験」全てに対象レベルは存在します。
英語の運用能力というのはCEFRのレベルによって判断することが一般的になっているわけですが、A1からC2までの全てのレベルを網羅するテストを作成すれば、とんでもない分量になります。各レベルについては詳細な記事を作成しているので、以下の各記事を読んでもらえば全レベルに対応することが到底不可能であることが分かるはずです……。
ということで、各検定試験には対応レベルが存在しており、それを分かりやすくまとめたのが以下の有名な表になります。
英検は5級から1級まで、ひとつひとつ級を上げていく仕組みになっているため、対象レベルを意識せずに受験しやすいスタイルになっており、3級までがCEFRのA1以下のレベル、準2級からは級が上がるごとにCEFRのレベルが1つずつ上がっていきます。そのため、準2級がA2、2級がB1、準1級がB2、1級がC1レベルに対応した試験になっています。
また、TOEFL・IELTSは前述の通りテストは一種類で、スコア制を導入しているため、級という仕組みはありません。また、上の図の通りCEFR B1からC1レベルが主な対象となっており、英検2級以上のレベルの英語力があることが受験の前提となっています。一応、CEFR B1以下のレベルに対応するスコア(TOEFLなら42点未満、IELTSなら4.0未満)も存在はしているのですが、これらのレベルについては、十分な確実性をもって測定することができないという扱いになります。
TEAPやTOEICについても、上の図を見て分かる通り、より幅の広い試験にはなっていますが、CEFRのレベルで対応できる範囲が決まっています。ちなみにTEAPはCEFR A2レベルから測定が出来る半面、CEFR C1の範囲がかなり狭くなっています。また、TOEICは上の表のかなり広い範囲をカバーしていますが、L&RとS&Wの2つのテストを両方受験する必要があるため、試験の分量が多くなっています。
ここまで、英語力の基本的な指標であるCEFRレベルを用いて各検定試験の対象レベルというものを比べていきました。各レベルの詳細については上の記事を見ていただきたいほか、以下の記事では中高生の皆さんが目指すべきCEFRレベルや、大学入試に必要となる英語力をCEFRレベルを用いて紹介しています。ご覧ください。
そして、次の項目では代表的な英語検定試験である、英検・TOEFL・IELTSについて問題形式の違いを各技能で見ていきましょう。
3.各検定試験の問題形式
では、ここからは各検定試験の問題形式を比較していくのですが、英検5級とTOEFLの問題を比べて、当然TOEFLが難しいとか言っても意味がないので、同程度のCEFRレベルで問題形式を比較していきます。ここではCEFR B1以上に焦点を当て、英検2級以上・TOEFL・IELTSのそれぞれの検定試験について、各問題の形式を簡単に比較していきます。
1.概論 ~TOEFLは難しいのか?~
まずは概論として一番大きな違いに触れておきます。そもそも、英検とIELTSは4技能のそれぞれを常に単独で評価している(ライティングならライティング能力のみあれば解くことが出来る問題が出題される)一方で、TOEFLのWritingとSpeakingには複数の技能を同時に評価する「複合形式の問題(Integrated Task)」が出題される点が大きく異なります。
そのため、TOEFLのライティングとスピーキングにおいて高得点を取るためには、その他の技能(リーディング・リスニングなど)においても高い能力が求められます。よって、TOEFLで高得点を狙うにはすべての技能の能力を高める必要があり、英検やIELTSよりも難しい試験であると一般的に言われているわけですね。
確かにこれは一理あるというか、日本人は総じてリーディングのスキルは高いがその他の技能が不十分なケースが多く、技能による能力の差が激しい傾向にあります。そうなるとTOEFLの「複合形式(Integrated Task)」に対応して高得点を取ることが難しくなるわけですね。そのため、ひとつひとつの技能が独立しており、個々の技能の対策のみで得点を伸ばすことのできる英検やIELTSのほうが、技能ごとの能力に偏りがある日本人には向いている試験であると言えるでしょう。
また、TOEFLはComputer Based Test(コンピューター上で解答する形式)であり、Paper Based Test(紙に書いて解答する形式)の英検やIELTSとは使用するツールの面でも異なっています。ただ、IELTSについてもCBT形式が近年導入されているおり、コンピューターでのライティングが苦手でない場合はCBT形式も検討すると良いでしょう。
2.リーディング問題の形式
まず、リーディング問題の形式を見ていくのですが、TOEFLとIELTSの2つの試験は似通っており、アカデミックな長文が出題され、それの内容に関する問題のみが出題されます。そのため、純粋に長文の読解力が問われるテストと言って良いでしょう。
しかし、設問の形式については差異があり、IELTSは内容理解を重視しており、YES/TRUE(書いてある内容と一致)、NO/FALSE(書いてある内容と違う)、NOT GIVEN(本文に書いていない)を問う内容一致問題のほか、段落ごとのタイトルを付ける問題や、要約を行う問題が出題されます。詳細は以下の記事も参考にしてください。
TOEFLでも内容一致や要約問題は出題されますが、本文中の単語やフレーズを指示して意味を尋ねたり、指示語の内容を問う問題、パラフレーズを行わせる問題が出題されるため、読解力も重要ですが、語彙や文法の力、論理的に考える力も問われる試験にもなっています。
一方、英検はリーディング問題の中で語彙を重視する傾向にあり、1級から3級までの全ての級で熟語・イディオムを含む語彙問題が全体の5割以上を占める形となっています。特に準1級や1級ではTOEFL・IELTSでは滅多に見ることのない難解な語彙の知識を問う問題が多く出題されるため、対策の方法が根本的に異なります。語彙力の増強について関心がある方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
また、読解問題の難易度は対象となるCEFRレベルに比べると低く、合格を狙うなら9割以上の得点が必要になってきます。詳しいリーディング問題の分析は以下の記事をご覧ください。
3.リスニング問題の形式
リスニング問題についてもやはりTOEFL・IELTSと英検は出題形式が大きく異なっています。特に、ひとつひとつのリスニング問題の長さが異なっており、TOEFL・IELTSはかなり長い対話や講義を聴いて5問以上の問題に答える必要がある一方、英検は短い問題を聴いて1問~2問答えるという流れが一般的です。
TOEFLは試験自体が60分で6題のケースと、90分で9題が出題されるケースの両方がありますが、1題あたり5・6問に答える形式となっており、大学での会話や講義をテーマとした問題が出題されます。設問は内容一致がほとんどで、細部の聞き取りを問う問題ではありません。
IELTSは4題で各10問が問われるスタイルで、日常会話・日常的なスピーチ・アカデミックな会話・アカデミックな講義がそれぞれ出題されます。アカデミックな内容だけが出題されるTOEFLよりも、バリエーションに富んだ内容となっています。また、選択形式での内容一致も出題されますが、適切な語句や数値を記入する穴埋め問題が多く出題されるため、固有名詞のスペルアウトや数値の聞き取りが必ず必要になります。また、イギリス英語に特有のアクセントや表現が出題されるため、IELTSを受験するにあたってはこうした部分への対策も必要になるため、注意が必要です。
英検については短い会話文と短いアカデミックな説明文が2級以上で問われる形式のほとんどで、準1級以上ではシチュエーションが与えられた上で放送を聞き取るReal-Life問題、1級では長文のインタビューを聞き取る問題が出題されます。しかし、全ての問題が同じ配点であり、難問とされるReal-Life問題やインタビュー問題はあまり重要ではなく、短い対話などをしっかり聞き取る能力が求められます。内容については全て内容一致であり、シンプルな出題形式と言えるでしょう。
4.ライティング問題の形式
ライティングについてはTOEFL・IELTS・英検で大きく形式が異なっており、留学のためのスコアでTOEFLとIELTSの両方を使うことのできる場合は、解きやすいと感じる方のテストを対策するほうが良いでしょう。
まず、TOEFL・IELTS・英検でほとんど共通して問われる形式はトピックに対する自らの立場を主張する問題で、TOEFLではIndependent Taskとして、IELTSではTask 2として、英検ではこの形式のみが問われます。英検1級とTOEFLのライティングがある程度似ている一方、IELTSのTask 2では稀に意見を問わずにメリット・デメリットを単純に比較する問題が出るほか、2つの問題を1度に議論する問題も出題されることがあるため、問題のバリエーションが多くなっています。
さて、TOEFL・IELTSのライティングではもう1問出題があり、この違いが非常に個性的になっています。TOEFLでは上述したIntegrated Taskという複合問題が、IELTSではTask 1で図表の説明問題が出題されます。
TOEFLライティングのIntegrated Taskでは短いリーディング・リスニングを行った後に、リーディングとリスニングで得た情報を1つのライティングにまとめ直すという問題に、IELTSのTask 1ではグラフや図が与えられ、数値等の変化や図表の情報をライティングするという問題になっています。
これらは別の形で与えられた情報をライティングでまとめ直すという意味では似た問題ですが、情報の種類が異なっており、個人的にはグラフなどの数値系の問題が多く出題されるIELTSは対策がしやすいかと思います。また、リスニングを苦手としている方にはTOEFLのIntegrated Taskは難しい形式になるかと思われます。
5.スピーキング問題の形式
スピーキングについても各検定試験で問われ方がかなり違っており、ここも以下でしっかりと比較をしていきます。
まずTOEFLはIndependent Taskとして質問に対して立場を表明する問題が出題された後に、Integrated Taskが2題出題されます。1つ目のIntegrated Taskはリーディング・リスニング問題との複合型で、ライティングのIntegrated Taskのように、リーディングとリスニングをした内容の要約をスピーキングする形式になっています。2つ目のIntegrated Taskはリスニングとの複合で、聞き取った内容を要約して話すという形になっています。TOEFLのテストは試験官と対面して行う形ではなく、コンピューターに音声を吹き込む形式のため、どちらかというとコミュニケーションよりは純粋なスピーチのproduction能力が求められる試験になっています。
一方のIELTSは試験官との1対1でのスピーキングテストであり、自身のことについての一般的な質問に答えるPart 1、与えられたトピックについてのスピーチを行うPart 2、スピーチのトピックについて面接官とディスカッションを行うPart 3からなる形式になります。TOEFLでは情報を要約して喋る必要があり、上手く与えられた文や表現を使い、言い換えることが求められる一方、IELTSでは試験官とのディスカッションを行う必要があるなど、臨機応変に喋る能力が求められます。
英検は1級とそれ以下でかなり形式が異なっており、1級では5つのトピックから1つを選んでスピーチとディスカッションを行うIELTSに少し似ている形式である一方、準1級以下では問題カードを用いてイラストの描写を行ったり、試験官の質問に答えることが求められます。さらに、2級以下では英文のリーディング問題(読み上げと質問に答える設問)も出題されるため、純粋なスピーキング力のみを試すテストではなくなっています。
4.おわりに
この記事を通して、主要な英語検定試験の対象レベルや出題形式、難易度の違いといった要素を比較していきました。読者の皆さんにとって有益な情報となっていれば幸いです。また、各検定試験については別途記事で詳細な検討や攻略法の紹介などを行っています。是非関連記事からお読みになってください!
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